Neo Cafe 

趣味はバイクで走り回ること。

ガス欠寸前 こころ旅

f:id:sunnybusa:20160522102735j:plain

昨日は一日中ゴロゴロしていたら、風邪気味のせいか体調がイマイチでつまんない1日だった。


「今日こそは洗ってあげるから……」


そう呟きながらベランダから下の駐輪場を見る。 

毎日のように…

シロブサなのに、泥とホコリでドロドロのバイク。

人間や動物は、自分でシャワーを浴びたり川に入って体をきれいにすることが出来る。

とは言っても、近くに川がないので私はシャワー派であるが……


朝から強い日差しがリビングに差し込んでいる。

「これはチャンスだ」

カーテンを開けながらふと思った。

「今日の予定は………ないか。」

ヨレヨレのパジャマをベッドに投げて、ユニクロで買ったお気に入りのジーンズに足を通す。

しっぽを振りながら、ソフトがジーンズにしがみつく。

「散歩に連れて行ってくれるんだな、おい」

アルプスの少女ハイジに出て来るアルムおんじみたいな白い髭面が足にまとわりついてきた。

「残念だね。これでも食べててくれ。」

近所のドラッグストアに売っていた犬用のビスケットをネオにも分けてあげた。

ゲージを閉め、拭き上げ用のタオルを3枚と、カーシャンプーをレジ袋に入れエレベーターを降りる。


なんかこのくだり、どこかあの小説に似ている。


それにしても太陽の光が痛いほど強い。

黄色というよりも白。

体に悪そうな白い光を浴びながら、駐輪場からバイクを引っ張り出した。

「重てぇ〜」

マフラー変えたのに、エンジンかかってないとズシっとくる。

朝っぱらから爆音を立てるわけにはいかない。

密集した住宅がひしめく東京は住みにくい。

少しでもヘマをすると、マンションの掲示板の主役に抜擢されてしまうのである。

いや、お尋ね者扱いの方が正しいかもしれない。


去年の夏に8年ぶりに立ちゴケしたキズが、左側のサイドカウルに深く刻まれている。

初めてウグイスを近くで撮れて、浮かれながらUターンしてミスったお調子者の烙印だ。

メンテナンススタンドをかけてリアホイールをきれいにしたいのだが、今日は止めにした。

他が単にめんどくさいだけだが…


ホースの水がバイクのスクリーンに当たって飛び散る。

夏のような強い日差しと混じって、生き物ように跳ねる。

「気持ちいいだろう」

気持ちいいのは自分であり、ほったらかしにした負い目と綺麗になったことに満足したエゴのかたまりのオヤジのつぶやきである。


軽く拭き上げ、また重い車体を押しながら駐輪場に移動した。


「さて、どうしよう」

汚れたタオルを洗濯機の中に放り込むと、炭酸水を飲みながらテレビをつけた。

ロードバイクで旅をする人気の番組の時間だ。

福島の風景の中に溶け込みゆっくり旅する還暦過ぎた男優が味のあるレポートをする。

自転車本来の楽しみ方は、前を向いて移り変わる景色と風の匂いを嗅ぎながらペダルを漕ぐことではないかと思う。

彼の後をハンディカメラで追うスタッフたちも、一緒になってその恩恵に感謝し楽しんでいるように見えた。

休日の昼下がりにもってこいの番組である。


「いいなぁ〜ロードバイクでまったり」

岩場から川面を眺める男優の笑顔を見ながら、リビングのロードバイクに目をやる。

「暑いしな〜」

決断は早い方である。

メッシュジャケットにメッシュパンツを履くと、タンクバッグとヘルメットをぶら下げてマンションを後にした。


中央高速に乗って大月ICで降りる。

なぜ降りたかというと、出発したのが昼過ぎですでに2時を回っていたからである。

河口湖に行けば、日記のネタになると思い即断したはずだったがなぜか道志みちへのルートへ向かって走っている。

燃料計の目盛りはあと二つ。


ガソリン満タンからの走行距離は115キロ。

リッター30キロの低燃費のこいつには、ネオ坂峠を越えて次のガソリンスタンドまで行くポテンシャルがある。

無理やりそう思い込むしかなかった。

周りにはガソリンスタンドがないのだから…


後ろから大型バイクが追走して来た。

HONDA CB1300

「見覚えのあるバイクだ」

しかもここは走り屋の聖地。

スーッと背中に冷たい汗が流れる。

でも奴はジーンズ。

さらに無名ブランドの運動靴。

「勝てるかもしれない……彼は仕事のはず」

ネオ坂峠に続く細いカーブをキャラメルタイヤで爆走する。

軽い車体と意外に食いつくタイヤを潰しながら運動靴野郎を振り切った。


ネオ坂トンネルでヤツを見送りながら記念撮影をする。

f:id:sunnybusa:20160522145041j:plain

激しいバトルで喉がカラカラ。

道の駅どうしでくつろごうと目論んだが、バイク野郎で駐車場は満杯。f:id:sunnybusa:20160522150038j:plain

くつろげなかったので、河原で遊ぶファミリーを見てまったりしてから帰路に着いた。

f:id:sunnybusa:20160522150212j:plain

「まったりしてもいられないな。ガソリンスタンドが見つからない」

少し焦りながら相模原方面へ進む。

たぶん相模原方面へ行けばガソリンスタンドがあるに違いない。

f:id:sunnybusa:20160522160523j:plain

ガソリンの目盛りはあと一つ。


本当は高速で帰りたかったのだが、迷子の会の掟を守らなければならない。

「困った時はとにかく前に進め」

これで何度ドツボにハマったことか…


目盛りを気にしながら相模原市街を目指す。

もう4時なのに太陽の光は後頭部を容赦なく照りつける。

意識が朦朧とするが、ガス欠したら最悪のシナリオが待っている。

祈るような気持ちで走っていると、遠くにセルフの看板が見えた。

f:id:sunnybusa:20160522160841j:plain

「長かった〜」

ぐったりしながらひとまず給油完了。

メーターを見てゲンナリ。

4.8リッターしか入らない。

7.7リッタータンクだから、まだ2.9リッターも残っていたのだ。


「まあいい…」


ガソリンスタンドを出て、津久井湖の休憩所で冷たいお茶を首すじに当てながら体温を下げる。

f:id:sunnybusa:20160522162040j:plain

ベンチの端っこでてんとう虫も応援してくれていた。


「てんとうするなよ…」

f:id:sunnybusa:20160522162158j:plain

元気が出たのでてんとう虫さんにお礼を言って、ちょっと遠回りして16号経由で246を通って無事に帰って来ました。

途中、知り合いのCB乗りのお店の前で徐行し出勤しているか確認する。

何度も見返し、二度うなづいた。


「彼の走りには運動靴は似合わない」